Colorless Life
 「あ、あの・・・。」
 「ん?どうしたの?」
 「詩織さんのご両親は・・・どちらにいらっしゃるんですか・・?」

 男性は少し悩んでいるような顔をしていたが、やがて俺の顔を真剣に見つめて話し始めた。

 「詩織の両親はね・・・3ヶ月ほど前に亡くなったんだ・・・。」

 ・・・・・・・!!!

 なっ・・・・!!!うそ・・・・だろ・・・・・。

 時間が止まったような感覚だった。

 「亡く・・・・・なった・・・・?」

 男性はゆっくり頷いた。

 「3ヶ月ほど前、市内の歩行者天国で通り魔事件があったのは知ってるだろう?詩織の父親は、私の弟でもあるわけだが、犯人の青年に刺殺されたんだ・・・。」

 ・・・・・・・!!!!

 う、うそだ・・・・。そんな・・ことって・・・・。

 全身の力が抜けていった・・・。

 「詩織の母親はそれにショックを受けてしまって、ノイローゼ気味になってね。詩織を残して自殺してしまったんだ・・・。」
 「・・・・・・。」

 何も・・・知らなかったのは・・・、俺のほうだった・・・。
 朝倉は・・・・、俺なんかとは比べ物にならないほど・・・つらい人生を送っていた・・・。

 「自分の父親が死んだ後だというのに、自分のことはそっちのけで・・・詩織は一生懸命母親を励ましながら健気に看病していたんだけどね・・・。こんな結果になってしまって・・・。あの子は本当に強い子だよ・・・。本当に・・・。」

 ・・・・・・・・。

 ・・・昨日のことが頭によみがえってきた・・・・。

 “俺がどうしようと俺の勝手だろ!朝倉には関係ないじゃないか!!”

 “朝倉だって他人事だろ!分かった様な事言ったって綺麗事なんだろ!!”

 “大切な人を失った人間の気持ちなんて、失ったことない奴に分かる訳ないじゃないか!!”

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