Colorless Life
 俺は柏木町の墓地の石段に座っていた。

 朝倉笑ってた・・・。
 あんな目にあって・・・、どうしてあんな笑顔が見せられるんだろう・・・。

 思考をめぐらしていると、後ろから走ってくる足音が聞こえてきた。

 「お待たせ!それじゃあ、行こっか。」

 朝倉は私服になっていた。制服の時とはまた少し違った新鮮さがあった。
 その後姿を見つめながら彼女についていった。

 俺たちは近くの駅から電車に乗って、5つか6つほど進んだ所で降りた。

 米沢駅。聞いたことのない場所だった。
 俺の中学校があったところとは逆の方向だったせいか、その景色には全くなじみがなかった。

 俺たちは住宅街を歩いていった。

 すると、びっしりと並んだ住宅の間に、何も建てられていない空き地が見えてきた。
 その場所は明らかに周囲の風景から浮いていて、仲間外れにされているようだった。

 彼女は、その空き地の前で立ち止まった。表情から哀愁が漂っていた。
 「・・・・・・。」

 彼女は静かに空き地の中に2,3歩入っていった。

 「ここね・・・。昔、私が住んでいたところなの。」

 「えっ・・・・。」
 空き地を見た。軽く砂煙が上がっていた。

 「まさかもう家がなくなっちゃってるとは思ってなかったけどね・・・・。」

 彼女はしばらく黙って空き地を見ていた。

 後姿からも寂しさと悲しさが痛いほど伝わってきて、胸が苦しくなった・・・。
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