Colorless Life
 「真田君・・・。後悔してるでしょ?」

 「え・・・・?」
 ドキッとして空き地を見つめたまま話す彼女を見た。

 「あの日・・・歩行者天国に行かなければ・・・、こんなことにはならなかったのに・・・って。」
 「・・・・。」

 「自分があの日あんなことしなければ、あの時こうしていたら、今こんな思いしなくてよかったのに・・・。そう思ってるんじゃない?」
 「・・・その通りだな・・・。」

 「私もそうだった・・・。私の家はね、お父さんとお母さんがすごく仲良しだったの・・・。お父さんがいなくなって、お母さんすごく悲しんでて・・・、だから私、必死でお母さんを励ましたつもりだったのに・・・。結局・・、お母さんも・・・。」

 朝倉は泣いているようだった・・・。

 どこかの住宅からピアノを練習する音が、かすかに聞こえてきた・・・。

 「私が・・・もっと頑張ったら・・・、お母さんにもっともっと・・・色んな事してあげてたら・・・、お母さんは元気になったかもしれない・・・。そしたら・・・お母さんと2人で・・・。」

 朝倉は必死で自分を落ち着かせようとしていた・・・。
 俺はそれをただ見ていることしかできなかった・・・。

 「でもね!!」

 朝倉は振り返った。目からは涙が流れていた。その輝く涙を見て、胸がいっそうしめつめられた。

 「私がどれだけ後悔しても、どれだけ泣いても・・・お母さんもお父さんも帰ってこないの!あの頃の生活はもう・・・何をしたって取り戻せないの!!」
 「・・・・・・。」
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