Colorless Life
 柏木町に戻る電車の中で朝倉は突然話し始めた。

 「昨日はあんなこと言っちゃったけどね、実は私、真田君のこと、すごいって思ってたんだよ。」
 「え!?な、なんで?」

 「死刑について話し合いがあった日覚えてる?」
 「そりゃ~、忘れるわけないよ。俺1人で大騒ぎしたんだから。」

 「実はあの時、私も真田君と同じこと考えてたの。人の気も知らないで~ってね。でも、みんなが口を揃えて死刑制度反対を唱えるから、言う勇気がなかったのよ。そんな中で真田君ははっきり言ってくれたでしょ?あれはきっと沢木さんのことを今でも本当に大切に思ってなかったら言えないことだと思う。」
 「はははっ・・・。あの時は必死だったから何を考えてたかはよく覚えてないけどね。」

 「そんな真田君を見てきて、私思ったの。どんな過去も消すんじゃなくて、未来を作るための土台にすれば、もっと人生が明るく楽しくなるんじゃないかなぁってね。」
 「土台か・・・。」
 「過去にしがみつくだけなのはダメだけど、それを忘れちゃうこともダメなんだよね。これが今まで過去に蓋をしてきた私が真田君から学んだこと。今日あの場所で泣いたら心がスーッとしたの。思いつめるだけじゃ、心が磨り減っちゃうって分かったよ。」

 「そっか・・・。俺たちはもしかしたらちょうど両端にいたのかもしれないな。」
 「そうだね。何事も極端なのはダメだね。ちょうどいいところを見つけていかないとね。」

 「うん。朝倉のおかげで前に進めそうな気がしてきた!」
 「私も、時には過去の思い出に浸るのが大切だって分かった!」

 俺たちは笑った。
 こんな時間を過ごしたのはすごく久しぶりのような気がした・・・。

 「ふぅ、やっと見られた・・・。」

 彼女は嬉しそうにつぶやいた。
 「え?何?」
 「ふふふっ、秘密~。」
 彼女はすごく楽しそうだった。
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