Colorless Life
 「みなさん、はじめまして。今日から1年6組の担任になりました。井上弘子といいます。科目は英語です。1年間よろしくお願いします。」
 先生が丁寧に挨拶した。まだ新米なのか、言葉の節々に緊張が感じ取れた。

 朝倉詩織の顔が頭から離れなくなっていた・・・。
 遥に双子の姉妹がいたなんて話は聞いたことがない。そもそも苗字が違うんだからそれはないはずだ。でも・・・、似すぎている・・・。あんなそっくりだなんて、遥となにかつながりがあるとしか思えない・・・・。

 彼女の方をずっと見ていたことから視線を感じたのか、彼女は突然振り返った。
 俺は慌てて視線を落とした。
 先生の話はほとんど聞いていなかった。
 というか、それどころじゃなかった・・・。

 とにかく自分に言い聞かせることに必死だった・・・。
 気にしすぎだ・・・。彼女は遥じゃない・・・。遥はもういないんだ・・・。

 先生の話の後、クラス委員が決められた。先生が立候補を募ったものの誰もいなかったので、出席番号1番の男女、相田と朝倉がなることになった。
 クラス委員の主導の下、次は委員と係が決められた。俺はクラスとできるだけ関わりたくなかったから、図書委員になった。
 こうして一通り委員と係を決めた後、入学式が始まって、教室に戻ってきたら教科書が配布された。

 高校初日は授業がなかった。時間割を確認して授業の予習をきちんとしてこなければ、高校の授業にはあっという間においていかれると井上先生は念を押して言った。
 その後すぐに解散になった。部活動の見学と入部手続きが行われるようだっだが、部活動に入る気のない俺には関係がなかった。
 進二はサッカー部を見学するというので、俺は先に帰ることにした。

 帰り支度をしていると、朝倉が女の子と話をしているのが聞こえた。
 「朝倉さんはどこに入るか決めてるの?」
 「うん。私は剣道部かなぁ。中学の頃からずっとやってるからね。」
 「へぇ~、剣道かぁ、かっこいいねぇ~。」
 帰り支度を終えて教室を出た。
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