Colorless Life
 やっぱり別人だな。そう、別人だ。あの子は遥じゃない。遥とは何の関係もないんだ。
 何度も同じことを繰り返し言い聞かせる自分が嫌になってきた。

 自転車に乗って帰っているときも、家に帰ってベッドに寝転がっても、朝倉の顔が浮かんでくる・・・。

 寝て忘れようとしたのに、寝ようとすればするほど目が冴えてきた。

 「くそっ!」

 飛び起きて、家をでて自転車に飛び乗った。

 あの日以来、この場所はたった1人の秘密基地になった・・・。

 石段をゆっくり上がっていった。
 人の気配は全くなかった。

 いつからか、この冷たくて静かな空気が好きになった。
 死に最も近い世界に入った気分になれるからなのかもしれない・・・。

 遥の前にやってきた。墓の裏に回った。

 沢木遥(享年壱拾五歳)

 この文字を見たら少し落ち着いてきた。

 そうだ・・・。遥は死んだ・・・・。あの日に・・・・。
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