Colorless Life
 よっちんは、一言で言えばすっごくいい先生だった。

 普段は何考えてるか分からない、というか少しのんびりしたところがあるが、悩みを持った生徒にはすごく敏感で、いつでも親身になって相談に乗ってくれた。
 3年2組の担任になった時も、受験で神経質になる俺たちのことをいつも考えてくれて、毎日のように勇気付けてくれた。

 みんなよっちんをすごく信頼していた。もちろん俺もそうだった。下手すりゃ、父さん母さんよりも信頼していたかもしれない。

 生徒にあだ名で呼ばれる段階で、よっちんの先生としての信頼度の高さは窺えた。

 とはいえ、あまりに生徒に友達感覚で接するせいで、保護者や他の先生からは少し注意されることも度々あったみたいだった。
 まぁ・・・、生徒にとっていい先生ほど、他の奴らから睨まれるなんてのはよくあることだけど・・・。

 そんなよっちんを黙って見ていたら、よっちんは片方の眉を少し上げて腕を組んだ。

 「んで?今日はどうしたんだよ。勇治。」
 「うん・・・。なんとなくね・・・。」
 俺はそう言って夕日に赤く染まるグラウンドを眺めた。

 すると、よっちんは俺の肩に手をかけた。
 「まぁ、とりあえずこっち来て座れや。」
 俺はよっちんに連れられてグラウンドに入っていった。

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