Colorless Life
 グラウンドには、もう生徒はいなくなっていた。

 俺とよっちんはグラウンドの端っこの小さな木のベンチに座った。

 このグラウンドもよく100m走の練習で走ってたっけな・・・。

 誰もいないグラウンドに、かつての自分の姿が甦ってきた・・・。

 「んで、どうだよ。高校生活は。」
 思い出に浸っているとよっちんが口を開いた。
 「うん・・・・。」
 俺はぼんやりとグラウンドを眺めたまま答えた。

 よっちんはそれ以上何も聞かなかった・・・。
 じっと俺の言葉を待っているように見えた・・・。

 昔から変わらない・・・。いつも生徒のペースで話をしてくれるこのスタンス・・・。
 俺はよっちんの優しさに少し甘えて、しばらくグラウンドを眺めていた・・・。

 「俺さ、謹慎処分になったんだ・・・。」
 俺と同じようにグラウンドを眺めていたよっちんが俺の方を静かに向いた。

 よっちんは驚く表情を全く見せなかった。
 「そうか・・・。」
 よっちんはただ一言そう言って、ゆっくりグラウンドに視線を戻した。

 再び沈黙が静かに流れた。

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