Colorless Life
 気がついた時には病院のベッドに寝ていた。父さんと母さんが心配そうに俺を見つめていた。

 「勇治!!平気か!?」
 ぼんやりとした思考が明確なものに変ると同時に、恐怖に似た不安が頭の中をよぎった・・・。

 それを振り払いたくて飛び起きた。

 「遥!!遥はどこ!?」
 父さんと母さんの顔が強張った・・・。

 「霊安室に・・・、行ってあげなさい・・・・。」
 「!!!!?」
 病室を飛び出した。

 そんな・・・。そんな・・・!!!

 霊安室に飛び込むと、1組の男女が立っていた。女性のほうは号泣していて、男性はそれを涙ぐみながら慰めていた・・・。

 男女とは別に1台ストレッチャーが置かれていた・・・。
 俺はストレッチャーに歩み寄った・・・。

 「あ、あの・・・・。」
 声が震えていた。心臓が飛び出しそうなほど激しく鼓動していた・・・。

 「勇治君・・・だね?」
 男性が俺に尋ねてきた・・・。
 「は、はい・・・・。」

 男性はそれを聞くとストレッチャーの上で寝ている人の顔にかかっている布を取った・・・・。

 ・・・・・・・!!!!!!

 全身の力が抜けてひざから崩れ落ちた・・・。涙がとめどなく溢れてきた・・・。

 そこにはかつての面影を失った遥が眠っていた・・・・・。

 「あぁっ・・・、あぁあぁぁっ・・・・・・。」

 男性は俺に優しく語り掛けてくれた・・・。
 「遥は君のような者に会えて幸せだったよ・・・・。最後まで君の手を離さなかったそうだ・・・・。」

 「あぁぁっ・・・、俺の・・・せい・・だ・・・・。俺の・・・・。」

 「ありがとう・・・・。遥のことを大切にしてくれて・・・・。本当にありがとう・・・・。」

 「うあっ・・・あぁぁあぁっ・・・・あぁぁあぁあぁあぁっ・・・。うああああああああああああああああああっっっ!!!!!!!!」

 俺はその日、生まれて初めて泣き叫んだ・・・。
 叫び声は霊安室に反響して余計に大きく聞こえた・・・。

 遥の両親は全く俺を責めなかった・・・。2人は俺に、もう遥の影に苦しまなくてもよいと言ってくれた・・・。
 徹底的に責められたほうがよかった・・・。2人の優しさが逆につらかった・・・。

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