Colorless Life
 私が教室に戻ってくると、さっき廊下で会った2人が、私の方を見ていた。
 私と目が合うと慌てて視線を落とした。
 私はあの子の席を確認して黒板で名前を照合した。

 真田勇治君・・・。
 入学試験の時から“あの子”だった彼に名前がついた。

 でも・・・、あの笑顔は・・・。
 あの笑顔は、もう見せてくれないのかな・・・・。

 チャイムが鳴って、先生が入ってきた。
 「みなさん、はじめまして。今日から1年6組の担任になりました。井上弘子といいます。科目は英語です。1年間よろしくお願いします。」
 新米の先生なのかな・・・?すごく緊張してるみたい。

 真田勇治君のことが再び頭をよぎった・・・。

 たった1ヶ月前のことなのに、今の彼のあの瞳を見ると、あの時の笑顔はもう何年も前のもののような気さえしてくる・・・。
 本当に・・・何があったんだろう・・・・。

 私は静かに振り返って、もう1度彼を見た。
 すると彼も私の方を見ていて、目が合ってしまったから慌てて前を向いた。

 もう1度見たいなぁ・・・・、あの時の笑顔・・・・。

 先生の話の後、クラス委員を決めることになった。先生が立候補は無いかとみんなに聞いたけど、誰もいなかったから、出席番号1番の相田君と私がなることになってしまった。
 クラスで委員と係を決めたら入学式、その後クラスに戻って教科書配布と続いた。
 井上先生は、高校の授業は大変だからきちんと予習をするようにと何度も念を押した。
 今日はそれで解散になった。
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