Colorless Life
 私は部活動の見学に行くために帰り支度をしていた。

 すると佐藤さんが私に話しかけてきた。
 「朝倉さんはどこに入るか決めてるの?」
 「うん。私は剣道部かなぁ。中学の頃からずっとやってるからね。」
 「へぇ~、剣道かぁ、かっこいいねぇ~。」
 「そうかな~。でも大変だよ~。夏はむさ苦しいし冬は裸足で足が凍りそうだし。」
 「ふふふっ、でも好きなんでしょ?」
 「あははっ、まあね~。」

 私は剣道が好き。
 竹刀を握った時の精神が研ぎ澄まされていくあの感覚。
 無心になった時のあの気の高まりは一度味わったら忘れられない。
 だからこそ、今までつらい練習にも耐えられたんだと思う。

 「それじゃあ、見学行って来るね。また明日。」
 「うん、ばいば~い。」
 私は優希を呼びに5組に向かった。

 優希と私は剣道場で正座して練習をじっと見ていた。

 隣には水野君もいた。
 水野敏也君は同じ中学校ではないけど、県大会で何度か会ううちに友達になった。
 彼は無口だけど、剣道の腕はすごかった。尊敬に値する人物だと思う。

 竹刀と竹刀のあたる音が道場に響き渡っていた。

 懐かしいなぁ・・・・。
 受験勉強してる時は、ほとんど竹刀に触らなかったから余計にこの音が心地よく感じた。
 うれしくなって自然と笑顔になっていた。

 練習後、入部届の記入をした。
 優希は少し考えるといって、入部届を提出せずかばんにしまった。
 私は優希を軽く見てから入部届を提出した。

 剣道なんて普通の女の子はしたがらない。青葉北も女子部員は私を入れて今6人しかいなかった。

 できることなら、また優希と一緒に剣道がしたかった。
 でも、それを優希に言うことはしなかった。それは優希自身が決めることだから・・・。
 人に言われてやったって、きっと面白くないもんね・・・・。

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