【兄と義妹】時空を切り出す光化学
「お前、こんなんで良く俺に手伝いを頼めたな……」
「……?」
なんというか……、正直者には違いないが、愚直(正直すぎる)とでもいうのか……。
そこかしこに散らばる青年漫画。その多くは、まぁ、なんというか、義兄妹もの……。いや、中には、男同士、なんてのもあるんだけどな。
これはフラグか? 喜ぶべきか、怒るべきか、そこが問題だ。
「けんにぃ、それは本棚……。入ればそれでいい……」
複雑な心境だ。こうして妹のエロ本を整理していく兄とは……。
なんと言うか、普段、無愛想な程、無表情なのに、しっかりと性欲を持て余しているとは、なにを考えてるのかさっぱりわからん。
「エッチな本、見たくなかった……?」
「え……?」
何を突然……。というか見あげるな、近い、くすぐったい。
「けんにぃ、手ぇ止まってる……。考え事の顔」
あぁ、こいつはもうわかるのか……。俺の些細な変化に。ポーカーフェイスが得意だったのになぁ……。
「いや、お前が、妹が女になってくのは、なんか複雑だなぁって」
「お父さん?」
「まぁ、心境的には遠くもないな。嫁ぐことを憂いてるあたり……。でもな、兄ちゃん、一つだけ夢があるんだ」
「夢……?」
「楓の彼氏、時期夫を、シンジさんの代わりに、一発ぶん殴る」
「なにそれ……」
楓はやや呆れ顔だが、俺は続ける。
「古臭いけどさ、今まで寂しい思いをさせない為に、尽くして来た最愛の妹を連れてかれんだ、それぐらいやんなきゃ、……切ないだろ?」
なんだか、もうすでに彼氏を目の前に連れてこられた父のようだ……。
「とりあえず、けんにぃ……、ティッシュ」
「ありがどなぁ」
鼻水がだらしない。
「……一人は嫌い?」
「いや、お前が好きになった奴なら、信用するよ。一人が寂しくなったら、兄ちゃんも結婚相手をぼちぼち探すよ」
「私が早く逝っても……?」
「は?」
自惚れかもしれないが、これはあれか?
楓ルート突入?