きみに伝えた気持ちは(短編)
 生まれて初めて、チョコレートを作った。

 キッチンにたつこともめったにない私。

 初めて買ったお菓子の本、片手にがんばってつくった。

 ラッピングもがんばって、自分でしたんだ。


 大好きをいっぱいこめた甘い、甘い、チョコレート。



 粉雪舞い散るバレンタインデー当日渡した。

 一人で校門から出てきた遼は、肩にうっすらと雪を乗せて、立っていた私に目を見開いた。



「芽生? びっくりした? どうした? 雪まみれだ、寒いだろ」



 歩いてきて、私の肩の雪を払ってくれた。

 大きな手に、どきんとした。

 指先が頬に触れた。 



「すごいほっぺ冷たい。誰か待ってるのか? けど、どんどん降り始めたし、もう、帰ったほうがいい。 え?」



 差し出された紙袋にきょとんとする、遼。




 
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