きみに伝えた気持ちは(短編)
 つややかな黒髪を風になびかせて、駆け寄ってきたのは佐藤さん。

 手にはピンク色のリボンがかけられた箱を持っていた。



「遼くん、着替えるの早いね。私がいったら、もういないんだもん」


 チラッと私を見た。冷たい一瞥。

 すぐに遼に視線をもどして、遼に箱を差し出した。


「はい。今日バレンタインデーでしょう。どうぞ」



 にっこりと花が開くように、あでやかに佐藤さんは微笑んだ。



 うけとらないで。


 そういう権利は、私にはなくて・・・。



 遼が受け取った。



「サンキュ、佐藤」

「いいえ、受け取ってくれてありがとう」

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