きみに伝えた気持ちは(短編)
4
バレンタインデーの日。
家に帰って・・・、珍しく九時前に帰宅していたお父さんに、転勤のことを聞かされたんだ。
あれから、ほぼ一ヶ月。
「チョコ。芽生からもらったのだけはちゃんと、おれがぜんぶ食べたから」
「え?」
「あけてみてすぐにわかった。芽生が作ってくれたんだなってこと」
「なんで?」
「そりゃわかるよ。ミートボールみたいだったから!」
「ひどい」
手を振り上げて、遼をたたこうとすると、その手を大きな手のひらが優しく受け止めてくれた。
にっこりと私を見て、笑う。
「でも、味は最高に甘くて、おいしかった」
「・・・遼」
「さてっと」
遼は紙袋の中から、さらに二つの包みを取り出した。
右手のほうは少し大きめの紙袋、左手のほうは小さな箱。
いたずらっぽく、片目をつぶって言う。
「大きい方と、小さい方、どっちがいい?」