きみに伝えた気持ちは(短編)
 自転車で上ってきた坂道をみると、改めて感心する。

 急なカーブが何回も続く、坂道。

 でも、自転車で勢いよく下っていったら、スリルがあって楽しそうな気もする。

 崖とを隔てている柵のそばまでいって、自転車を止めた。



 眼下に広がる町並みは私が育った町。

 夜見たときは家々がともす光しか見えなかったけど、こうしてみると、場所がはっきりわかる。

 あれが、学校、コンビニで、ずっとすんできた社宅はたぶん、あそこ。

 ミニチュアのように、見えるけど、あそこには確かに私の大切な人たちがいっぱい暮らしているんだ。

 

 ずっと、ずっと、変わらずにあそこにいて、どこかにいかなければならない日が来るなんて・・・少しも、考えたことがなかった。

 

「もう、来月の今日は、私はここにいないんだ」



 そう思うと、胸が締め付けられるように苦しくなった。

 



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