きみに伝えた気持ちは(短編)
 どうして、お父さん、転勤になんかなっちゃったの?

 家族で行ったこともない、県にひっこさなくちゃいけないの?

 どうして・・・大好きな人たちと、はなれなきゃいけないの?

 いやだよ・・・。もう、決まったことだけど・・・でも、本当はいや。



 鼻の奥がつんとして、目の奥が熱くなる。

 泣かない。

 ぎゅっと唇をかみ締める。



「ねぇ、遼。私、もう、泣かないよ。いっぱい、泣いたし、それに・・・」



 もう、会えなくなる。そう思ったら、できなかったことが出来たんだ。

 訪れてくる別れは、私の背中を押してくれたんだ。



 ずっと、ずっと、気がついても、いえなかった気持ち。


 あせらなくてもいい、ずっと、そばにいるなら、いつか伝えたいと思っていた気持ちを・・・伝えることができたから。




 遼が好きだと・・・。


 
< 3 / 27 >

この作品をシェア

pagetop