きみに伝えた気持ちは(短編)
そっと、指先で自分の唇に触れる。
柔らかい。
遼の唇も、柔らかくて、温かくて・・・飲んだばかりの、缶コーヒーの味がした。
二度目にしてもらったキスは、私がした不意打ちより、少し長くて、優しかった。
あれから、普通で、特に変わった様子のない遼に、すこしほっとしている私。
だって、あんなことしちゃった手前顔を合わせづらいけど、でも残された日々が少ないと思うと会わずにはいられなくて・・・正直、変わらずに接してくれている遼にほっとしている。
答えがほしかったわけじゃないから。
たぶん、私は記憶がほしかったんだ。
遼を確かに好きだったという記憶と、忘れない思い出がほしかった。
もう、会えなくなるから。