わたしの生きる道
「うっううん! 行くならあそこで充分! ただ…」

「ただ?」

「将来、手芸だけで食べていけるのかなぁって不安があって…」

「う~ん」

姉は本をテーブルに置き、腕を組んで考えこんだ。

「でもカナ、手芸って一言で言っても、ビーズアクセとか刺繍とか編み物とか、いろいろしてるじゃない。高校を卒業したら今より手芸にかける時間ができるんだし、収入だって増えるわよ。カナの作る手芸品、人気あるんだし」

「うん…」

「そんなに焦らなくても、カナが一人前になるまでは、家族みんなで面倒見てあげるからさ」

そう言ってわたしの頭を引き寄せ、抱き締めてくれる。

「うん…!」

姉のあたたかさと優しさに、胸がいっぱいになる。

わたしは幸せだ。

わたしを思ってくれる家族がいて、友達も理解ある。

恵まれているはずなのに…不安は消えなかった。
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