わたしの生きる道
両親が止めるのも聞かず、マンガの材料を買う為に、中学生の頃からバイトを頑張った。

その意思の強さは、きっと兄本来の強さなんだろう。

…体は健康なのに、わたしの方が弱い。

「おにぃは…さ。マンガ家になる時、不安ってなかった?」

「不安?」

「うん。その、マンガ家で成功できるのかなとか、食べていけるのかなって」

「…不安、か」

マグカップを両手で包み込み、兄は眼を閉じた。

多分、当時のことを思い出しているのだろう。

「不安は…あんまりなかった、かな? マンガを書くことしか、オレにできることはなかったから…」

「…そっか」

不安うんたらかんたらよりも、兄にはマンガ家という選択肢しかなかったのか。
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