あたしの王子様*



「もう一回。」

「は?」

「もう一回言って?聞こえなかった。」

「・・・言わない。」


柚子は急に椅子から立ち上がって耳まで真っ赤にして電車の入り口へ歩いていった。

聞こえなかった。はウソ。
ただもう一回ききたかった、
柚子がめったに言わない言葉だったのに、
でも頭の中に柚子の声が焼き付いた。
すこし照れくさそうに言う

『俺もだいすきだよ。』という声。


耳を真っ赤にしてる後ろ姿をあたしは少しの間みていた。
柚子は少し猫背、でもそんな所も可愛くて好き。
何だか猫みたいで、見ているとすごく愛おしくなって、ギュッと抱きしめたくなるんだ。


「陽南、乗るぞ!」


「うん!」


でも抱きつくのはまだ何だか照れるからもうすこし先かな。





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