仮病に口止め料

やだやだと駄々をこねる様子が(天性か神懸かり的に)ぶりっ子らしくて可愛かった。


けれど、この時期の風邪は油断するため長引くと聞くし、

(結局春も夏も秋も冬も季節の変わり目と言い一年中耳にするおばあちゃんの知恵袋だが)、

ゆっくり休んだ方がいいと思った。


だから、「行こう」と俺が無理に腕を引っ張ると――……嫌な予感は最悪な出来事が起きる一秒前にしか働かないから役に立たない。

小さな叫び声は耳の中から恋心を揺らがしてしまった。

眩暈を起こした彼女、小学生でも分かるくらいばりばり風邪ではないか。

辛いなら速やかに辛いと言わないからこうなる、我が儘も迷惑ものだ。

< 115 / 222 >

この作品をシェア

pagetop