仮病に口止め料
彼女の家族はインテリアに淡白を好むらしく、
例えば玄関にある棚の上には写真やらウサギの陶器やらこまごま飾られがちなのに、何も添えられていないし、
花瓶を置きがちなリビングにはオブジェが見当たらないし、
キッチンも冷蔵庫のマグネットが予備校みたいだし、全体的に色を抑えまくっている。
それらは(他人の分際で図々しく予測すると)、田上結衣という家宝の魅力が一番引き立つようにコーディネートされているような気さえした。
彼女は皆が心に置きたがる特別な人で――……なんて綴りやしない。
彼女は俺の体内に許可なく侵入し、図々しく居座るマイルールを譲らない権利主張派モンスターだ。