仮病に口止め料
「好きだよ。お前は笑った顔が一番よく似合うんだから早く元気になれよ? 俺はお前の笑い声が好きなんだ、なあ、俺が寂しいだろ?」
恋のグロスが残った唇からは自然とメロディーが零れた。
そう、高校生の基本は純愛です。
けれども俺と彼女は捻くれカップル故に、変化球でこそしっくりくる。
だから、恋歌は一本調子の棒読みを心掛けた。
リップサービスかどうかは知らない、ただチークを舞台メイクばりに彼女が入れてしまったのは確かだった。
これは多分、アンコールが期待できそうだ。
「可愛いな、大好きだよ」
胡散臭い台詞を噛まずに言えた自分を褒めてやろう。
これで俺も同級生からイケてるとされる(つまり大人からは痛いとされる)男子高生の仲間入りだ。