仮病に口止め料
呼吸の間隔が短いのか薄い肩が揺れているような気がしないでもないと考えていた時だ。
「おい近藤! 私語するな」
先生からのお叱りを受けて学年生徒から注目された俺は、
いつの間にか始まっていたラジオ体操を手先まで真面目にしておいた。
流れ作業で無意識に手足を曲げるのと、しっかり運動するのはどちらが価値があるのか――どうでもいい。
サボろうが本気を出そうが記憶として今の青春は確実に刻まれる、
ただ皆が揃わなくなる未来が予め分かっているのだから、俺は皆との時間が愛おしいだけだ。
からだの輪郭をなぞり落ちていく汗が消えた向こう側には、
クーラーが稼動している校舎が威張っていた。