仮病に口止め料




頭の上にある空を流れるプールに見立てたなら、

理科で習う通りに東へ消える雲が風に身を委ね反発しない理由がよく分かった。

背中を押されるままにつま先を浮かせば楽しいから、いつもされるがままなのだろう。


お日様がてっぺんにきたら、週二回のランチタイム学内デートの合図だ。


やっぱり本日の洋君はご機嫌だった。

今朝の登校も体育の授業も彼女に会えた(ロマンチックなのは逢えたらしいが、恋愛臭いので俺は会えたを用いる)からだけではなく、

更衣室で同級生たちに、『今日なんか田上かわいーな』とか『コンコンの彼女レベルん女紹介して』など、

気分が良くなるお喋りをしたためだ。

スキップする勢いで廊下を駆ければ、スリッパは恋する乙女ばりにたちまちバレエシューズに変身する不思議。

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