仮病に口止め料
立ち入り禁止の屋上へ続く中途半端な長さで途切れている階段は、
俺たちの待ち合わせ場所だ。
そこにスポットライトが当たれば、愛しの彼女の舞台となる。
「お待たせ」
手摺りを支えている柵にしがみつくようにして座り込んでいる彼女の雰囲気は憂鬱そうだったから、
「田上さん?」と、俺は顔を覗こうと膝をくの字に折った。
ちなみに付き合って半年、名前で呼べていない点に触れてはならない。
ここでようやく彼女彼女と綴っている理由が明らかになった訳だ。
さん付けなんて他人行儀だと言えば、脆い少年のハートが傷ついてしまいかねないため、
速やかに流してあげることを推奨する。