仮病に口止め料
そうなると、通勤通学ラッシュ時、電車やバスの中を軽く見渡せば、
仲間同士のお喋りは流し気味で反射した窓に映る己の前髪の分け目を模索する男子グループや、
親友の相談に適当な相槌を打ちつつ付けまつ毛の密着度を手鏡で調節する女子グループなど、
同性で固まっているのだけれど、実は異性の目線を意識しまくっている微笑ましい空気をひしひしと感じることだろう。
三流な俺の狭い生活範囲だと、所詮そんなもんだ。
故に、痴漢されている美少女を勇敢な美少年が助ける劇的な出会いとか、定期を落としたドジがきっかけで運命の人に導かれるとか、
『お前なんか女じゃねえ!』『もおッ、うるさ〜い』なんて口喧嘩をする友達以上恋人未満の幼なじみとか、
フレンドリーなナンパとは一味違う斬新な切り口で拉致を試みる輩に絡まれている転校生(本人は覚えていないが幼稚園の頃に結婚を約束して遠くに行った過去)と奇跡的な遭遇をするとか、
その辺りの奇想天外楽しそうな世界観はなく、
モテます自慢と自己顕示欲に満ちたメンバーしか登場しないことが、ただただ普通の日常だったりする。