仮病に口止め料

魔女のマストアイテム竹箒みたいに顔面が分からない髪の毛の嵐でも、

近づけば少し膨れたホッペを確認できたので人間だったと安心する。


しかし、熱愛中のお姫様と王子様の仲を嫉妬した奴に、声を奪う呪いをかけられた疑いが晴れないため、

お弁当バックを持った手を握り直し、「チーク変えた?」と、今朝同様に自信たっぷり質問をした。

いい加減返事をしてほしい。
別に孤独感に身を震わせるほどナイーブ少年ではないが、独り言が趣味な訳でもない故に、この状況はまあまあ辛い。


俺の彼女は性格までキュートな奴で、昼食前に毎回メイク直しをしてくるから、

今日もかいがいしくチークを叩いたと推理して尋ねたのに、

「え?、近藤くん、それ二回目」と、

あっさりオレ気取りを打ち消すのが、甘く淡く儚く可愛く護ってあげたくなる美少女だと男子から定評のある田上結衣だ。

< 35 / 222 >

この作品をシェア

pagetop