仮病に口止め料
……――外見ばかりを絶賛しており、性格についての愛が足りないって?
いやいや、交際歴半年で田上結衣の性格など、まず(生温い人生しか歩いていない)俺が熟知しているはずはない。
なぜなら、相手の性格なんて自分のさじ加減が都合よく作り出すだけだからだ。
つまり、他人という生き物を『チャラいと噂されている彼だけれど、本当は弱いのに無理して頑張る優しい奴だ』とか、
『見た目が派手な彼女は遊び人と誤解されがちだが、人一倍親切な子なんだ』とか、
知ったかで語る親友気取り・恋人面ほど痛いモンはありえないであろう。
俺にとっちゃあそんな語りはギャグ要素がゼロならば、失笑でしかない。
なんて、たらたら難しいことはスルーしよう、ここは洋平殿らしく『結衣ちゃんの性格は可愛い』でいい。
だって俺は知っている。
十年後の田上結衣は相変わらず深夜バラエティー番組のネタを日常会話にちりばめる癖に、
子供には自分を『お母さん』と呼ばせる女性になるのだと。
後半の文章の意味をしっかり解釈できる人は、恐らくこちら側の人であろう。