仮病に口止め料

『夜景が綺麗なの』の(家賃も)高く伸びるマンションや、『どこよりも安くします』の全国共通家電量販店が自己主張をする看板、

クラスで一人が言うであろう『昔裏メニュー制覇頑張ったよね』の(かなり古い)オシャレ会話の切り口となるコーヒーショップが入ったビル、

その他諸々、忙しい世界に切り取られた空に浮かぶのは、

お姫様の時代に子供たちが飛ばしたたんぽぽの綿毛が行く先であって、

雲だと断言してメルヘンをぶち壊してはならない。


『男子高生でありながら可愛い感性をしてるのね』と、微笑ましく思われたいのが俺、近藤洋平だ。


といった性格な訳で、退屈な電車の中、知的に活字が小さな小説を読まないし、携帯電話でクラスメートが更新しているらしいオシャレなブログをチェックしない時間は、

ただぼんやりと妄想をしているのみ、他校生から『あの人タイプなんだけど』や『あの男子良くない?』と噂されるだけで平和だ。

< 4 / 222 >

この作品をシェア

pagetop