たとえばセカイが沈むとき


「中をご覧になりますか?」

 言葉を濁し説明がぞんざいになった途端、"悪魔"と名乗ったミステリアスな男のヴェールが外れ、ただの誇張男に見えた。日付変更線を跨いで過去に戻れるならば、誰だってやってる。

「いや、結構です。貴重なものを見せて頂きありがとうございました。では……」

 拍子抜けというか、一気に興味が削がれ、徒労感が押し寄せた。『決心』を求められただけに、一層募る。

 この男が本当に過去へ戻る算段を持ったのだと、勝手に期待していた僕が悪いのだが。

 チャンスを逃すまいと、のこのことこんなところにまで来ておきながら、とんだ無駄足だった。苛立たしい気持ちもあるがそれよりも、落胆が大きい。


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