たとえばセカイが沈むとき


 外は既に陽が落ちていた。

 あの日のルートを事故現場から逆に辿る。事故現場に人だかりはなかったので、まだチサトは生きている。

 事故時は記憶が曖昧だが、歩いた道は鮮明に残っているから、過去の僕らから僕が見つかる前に、彼らを探し出せると思った。

 だが、一向に見つけられない。

 そうしているうちに、夕飯を食べた店に着いてしまった。まだ中にいるのかと出入りする人達が見える場所で待ってみたが、入るひとはおろか出て来る人のなかにチサトたちの姿はない。

 行き違いにはなっていないと断言出来るのに、結局店が閉店するまで粘っても、チサトたちは出て来なかった。

 有り得ないが、見逃してしまったのだろうか。事故現場に行った僕は、愕然とした。


< 23 / 44 >

この作品をシェア

pagetop