たとえばセカイが沈むとき


 近辺を再びうろついてみたが、やはり事故の痕跡を見つける事は出来なかった。場所も勘違いなどしていない。

 こうなると、答えは一つ。

 何らかの理由で、事故など起きなかったのだ。それは僕が過去に来た事と関係あるのかもしれない。

 まだ気を抜けないという気持ちを抱えながらも、期待を隠せずにいた。兎に角彼女の家へ行ってみる事にする。生きた彼女を見るまで、喜びはとっておこう。

 彼女の家はここから近い。何度も足を運んだ事がある。こじんまりしたレトロなアパートが建っている筈だった。

 しかし着いてみたそこに建っていたのは、新しい一軒家。表札も確かめたが、彼女のものでも増してや僕のものでもない。

 念の為建ち並ぶ家々の近隣を見てみたが、記憶にある彼女が住むアパートは、ついぞ見つける事が出来なかった。


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