たとえばセカイが沈むとき
「でも僕は、マシン内に一人ですよ」
僕がフライト──そう呼ぶ事にたった今レイと決めた──した時間の記憶は曖昧だ。だからもしかして、到着した時間よりも今がずっと早いだけかもしれないではないか。
だがこの世界の僕が来てもいい時間帯である気はするのに、マシン内はおろか、部屋にも僕は一人しかいなかった。過去の僕は何処へいるのだろう。
「それにその理論なら、マシンももう一機ないと」
過去にフライトした時、過去にあったマシンに、危うくぶつかりそうになった事を思い出す。
レイは黙ってドアを開けた。隣の部屋に通じているらしいドアを。
マシンがもう一機、見えた。この時代、もしくは世界のものが。
マシンがあるということは、この世界は僕の世界ではないという事か、レイが嘘をついていて最初から二機だったか。
それが、チサトのいなかった事となんの関係があるんだ。
ここが僕のもといた世界と違うにしろ同じにしろ、チサトがいるならどうでもいい。
そう思った僕の心を見透かすように、レイは言った。