たとえばセカイが沈むとき
少し前のセカイ
「ならば、もう一度……!」
フライトしようとタイムマシンに手をかけた僕を、レイの手がやんわりと押しとどめた。
「直さない限り、元の世界に戻れる保証もないんですよ」
「でも、チサトのいない世界よりはマシです!」
手をよじる僕にレイからの抗いはなく、語気への大きな変化もない。
彼の言葉を鵜呑みにして、何もせずに指をくわえている訳にはいかないのだ。
いなくなって初めてわかる大切さ。
レイは、ひとつ息を吐いた。その動作が僕の中の何かに触れ、衝動がはじける。
「いつ修理が終わるかも、わからないんでしょう? それにこのマシンはあなたの作ったものじゃない。僕は行きます」
言うだけ言ったら勢いづいた僕は、発進ボタンを押した。