たとえばセカイが沈むとき


 ぐわん、と加速して重力が歪む。眩暈がおさまると、僕は一年前らしい時代に到着していた。

 見慣れつつある、レイの部屋だ。作りかけのマシンもある。

 僕は飛び出し、あの場所へと急いだ。今度こそ、チサトのいる世界であってくれと強く願いながら。

 食事した店へ行くと、ちょうどチサトと過去の僕が出て来たところだった。

 チサトのいる世界だ。

 僕は声を出してしまいそうになった。だが僕が二人いるという光景は、端から見たら異様である事に間違いない。

 チサトを事故から守らなくてはという意識一心で、なんとか歓喜の声を飲み込んだ。慎重に行動しなければならない。チサトに、未来から来た僕を認識されないように。


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