たとえばセカイが沈むとき
誰にだって一つ二つ、やり直したい過去があるに違いない。それが軽微か重大かは、本人にしかわからないだろう。
『あの時、ああしていれば』
誰しも頭をよぎる筈。
何かの失敗かもしれない。分岐点かもしれない。
しかしその失敗があったからこそ成長出来たのかもしれないし、その分岐を選択した事で未来が拓けたのかもしれない。そう自分に言い聞かせるか、漫然と流されて思い出に変換されているか。
振り返ってみても、その時選ばなかった選択肢から先の未来を予測する事なんて、出来ないから。だからこそ人は、後悔しながらも、妥協と折り合いをつけていくのだろう。
手放すには惜しいコミュニティーが形成されていたり、価値を見いだしていたりして、続いた世界に馴染んでいれば尚更に。
彼が指摘したように、確かに僕には戻りたい過去があった。
そして僕は、今の世界になんら未練はなかった。