HONEY*ときどき*BOY
「ゲーム、豊崎。ゲームカウント、4-0!」
主審の先輩の声が響いた。
部長のサーブから始まった試合は、気付いたらオレが負ける寸前まできていた。
あと2ゲーム取られたら、試合終了。
普段のオレだったらしないようなミスまで、どんどん積み重なる。
「ねぇ、早坂くん調子悪くない?」
「うん。何かちょっと……格好悪いし」
ざわざわする周りの声が、鬱陶しい。 怖い。
いつも一緒に練習する部員も、あまりにもあっさりした展開にびっくりしてるみたいだった。
メンタルを整えられてないオレの、ただの自滅。
この試合の解説なんて、それだけで終わる。
「はぁああ……」
サーブを打とうと構える部長を見つめる。
足掻きたいと思うのに、足掻けない自分が恥ずかしい……。
できるなら、ここからすぐに逃げ出したい。
でも、無様に、完全に負けるまで、ここからは抜け出せないんだ。
「……っは!」
勢いよくラケットに当たったボールが、まっすぐにオレのコートに伸びる。
重いっ!
上手く集中できなかったから、インパクトが遅れて、ボールは思いっきりフェンスの方に飛んでいった。