HONEY*ときどき*BOY
こんな風に怒る羽月ちゃんを見るのは、子どもの頃以来だ。
でも、羽月ちゃんは豊崎部長を応援してるんじゃなかった……?
「秀は昔っからそうなんだから!ちゃんと相手の目を見て、『どうしよう』なんて迷ってないで!
自分に自信持って、はっきりしっかり勝負すれば良いでしょ!」
「羽月ちゃん……」
「あたしはここで見てるから!
ここで頑張るのが……“男の子のマナー”だからっ!」
肩を小さく上下させながら、羽月ちゃんが言った。
“男のマナー”
そこ響きが、すごく懐かしくて、嬉しい。
もう、羽月ちゃんが部長と付き合ってようが、付き合ってなかろうが、そんなのどうでも良い。
この、目の前の勝負を捨てるほど、もったいないことなんてない。
ラケットをぐっと握って、豊崎部長に向き合う。
羽月ちゃんの登場に少し驚いたみたいに見えるけど、部長は1回息を吐き出すと、サーブを打つ準備をした。
ゲームカウントは、まだ4−0のまま。
ここで粘れば、勝つ見込みは十分ある。
それに、ここで粘るのが、“男の子のマナー”……でしょ?
……絶対に、負けない!
先輩が高く上げたボールに、オレは全神経を集中させた――――