HONEY*ときどき*BOY
いつもと違って、正面から聞こえてきた言葉に思わず反応する。
いつの間に来たのか、目の前には黒いローファーが並んでる。
それにこの声は……
「試合、残念だったね。でも、レギュラーにはなれたんだし。本番でまた頑張れば良いんじゃない?」
優しくそう言ってくれる羽月ちゃんの顔が、まともに見れない。
試合中に羽月ちゃんが怒ったのは、きっとオレのためじゃない。
羽月ちゃんは部長の応援をしてたはずだし、きっと部長に格好良い勝ち方をしてほしくてあんなことを言ったんだ。
「……嬉しいだろ?」
「え?」
「豊崎部長が、格好良く勝ってさ、嬉しいだろ?当然だよね。オレなんかと違ってちゃんと男らしくてさ」
「何、言ってるの?」
苦笑いをする羽月ちゃんの顔なんて、これ以上見ていたくない。
「もう帰るよ。自慢の彼氏が勝って良かったね!」
最後だけ……
そう言ってから、羽月ちゃんを見た。
初めて、羽月ちゃんを睨んだ……――――
「ちょ、ちょっと……!」
背中から羽月ちゃんの焦った声が聞こえたけど
オレは振り返りもしないで、勢いよくその場を去った。