HONEY*ときどき*BOY
あまりにも大きい声だったから、騒いでたクラスメイトが一気に静かになる。
きょろきょろと教室を見まわしてた羽月ちゃんの顔が、オレを見つけて止まった。
昨日、コートで怒られた時と同じ、眉間に皺の寄った、怖い顔だ。
「ちょっと来てっ!」
そのまま教室に入って来た羽月ちゃんは、オレの腕をつかむとずかずかと歩きだした。
さっきオレが歩いてた時と違って、みんなが道をあけるからスムーズだ。
教室を出て、廊下を一緒に歩く。
オレよりも背の低い羽月ちゃんに引っ張られる……
いや、引きずられる、かな?
そんな様子を不思議がって、みんなが目を見開いてるのが見える。
「え……何で宮下先輩が?」
「昨日の試合でも早坂くんと親しそうだったって……」
「宮下先輩って、豊崎先輩と付き合ってるんだろ?」
あちこちから、そんな声もたくさん聞こえてくるし……
その質問、オレも全部羽月ちゃんに聞きたいくらいだ……!
それでも、明らかに不機嫌な羽月ちゃんの背中を見たら口を開く勇気なんてなくて……
オレは、静かに羽月ちゃんに従った。