HONEY*ときどき*BOY
「あたしがお世話をしなくても、もう平気ってことかな?」



窓枠に両腕を乗せながら、羽月ちゃんが首を少し傾けた。

黒い髪が、その後ろでさらっと揺れる。



「それは……」



あの頃。


小学生の頃、あんなに大きくて頼もしく見えた羽月ちゃんの背中が

今はすらっとしてて、華奢に見える。



そう思うオレは、たぶん変わった。


でも、実際は全然変わってない。



「でもさー、いつも告白断るよね?さすがに女の子が可哀相」



その理由、わかんないのかな?



「好きな子いるなら、告白でもして身を固めちゃえば良いのに……」



聞きたくても、聞けない。

言い返したくても、言えない。


それが、オレが変わってないっていう、情けない証拠……――――



「オレ、今日はもう帰るよ」


「そう? あ、試合頑張ってね!早坂くんっ」



……“早坂くん”って、誰のこと?


それに、それを羽月ちゃんが言うの……?



「ありがと、……宮下先輩」



飲み終わったペットボトルを、乱暴にゴミ箱に投げ入れた。


青い爽やかなラベルが、器用に回って落ちる。



本当はルール違反なんだけど、オレは羽月ちゃんと目を合わせないで、そのまま歩き出した。
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