昨日より、ずっと…
「そうなんだ。」

冷静に答えてみるけど、全然冷静なんかじゃない。

「たった、それだけなんだけどさ。」

恥ずかしそうに話す颯太。

「そんなに好きなんだ…。」

颯太に、こんなにも好かれてる人。
…あなたは、誰?

「ごめん、あたし帰る。」

この空気が息苦しく感じてしまった。

その場から立ち、ドアに向かう。

「もう帰んの?まだ、終わってないんだけどー!」

そんなの他の人に話せばいいじゃん。
…もう、あんたの好きな人の話なんて聞きたくないの。

どうしてか、なんてわからない。

自分がなんでこんなにモヤモヤしてるのかわからない。

颯太の家を出て、自分の家に向かう。

「おい!千春ー!明日、部活だから一緒に行こーぜ!!」

颯太の声がして、後ろを振り返るけど、颯太はいない。

どこだろう。

そう思ったとき、

「上だよ、千春!」

上を見ると、二階の窓から颯太が身を乗り出していた。

「ちょっ…!危ないから!!」

「明日!一緒に行こーぜ!」

「わかったからっ!」

颯太は、軽くガッツポーズをして、『よっしゃ!』って言った。

何が“よっしゃ”なのか、わかんないけど。

颯太とは、部活が同じ。
バスケ部。

男バスと女バスだから、あんまり一緒に練習なんかしないけど、なぜか一緒に行く。

好きな人が、いるなら、そんなことしなければいいのに。

期待させる。

…なんて、ね。

ありえないことくらい、わかってる。

好きな人は、あたしじゃない。

あたしの好きな人は…。

…もう遅いのに、今さら気付くなんて、つくづくバカだな、あたし。

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