白いジャージ7 ~先生とプールサイド~
「そうだったの。早く話してくれれば良かったのに」
「ごめんなさい。病院で、妊娠おめでとうって言われたら話すつもりだったの」
お母さんは、母子手帳を出してきてくれた。
「これ、見て。直の時の母子手帳」
ボロボロだったけど、とても大事にされていたのがわかる母子手帳だった。
「ほら、見て。出血って書いてるでしょ?他にも下痢とか便秘とか」
初期の頃に、お母さんも出血をしたことがあったんだと。
「それに、直はすごいんだから。話したことあったと思うけど、お母さん盲腸になったんだよ。それなのに、健康に生まれてきてくれた」
お母さんは当時の話を詳しく聞かせてくれた。
とても大事な妊娠初期に、お母さんは盲腸になった。
周りの人は“赤ちゃんに影響があるんじゃないか”と心配したらしいんだ。
でも、お父さんとお母さんは不思議と不安はなかったんだって。
絶対大丈夫って信じて、盲腸の手術を受けた。
病院の先生も大丈夫だからと言ってくれたし、お母さんは何も心配していなかったと。
「すごいね、お母さん。強いね」
「誰でも強くなれるのよ。母になるとね」
その言葉が、とてもよく理解できた。
まだ“母”と言えるかどうかわからないけど、私も母になって強くなれた。