白いジャージ7 ~先生とプールサイド~
「そんな苦労していたなんて。知らなかった。会社ではいつも元気いっぱいって感じだから」
元気じゃないわけじゃない。
でも、心から元気ってわけでもなかった。
「会社にいる方が楽しいんです。家が嫌なわけじゃないけど、家にいるといろんなこと考えてしまって・・・・・・時々しんどくなる」
「そうだよな。俺なんか、家のことで悩んだことないから。沙織ちゃんの立場だったら逃げ出したと思う。本当は家が一番安らげるはずなのに」
思っていた通りの人だった。
ちゃんと聞いてくれた。
大野先輩が、私を救ってくれる。
「また話聞いてもらえますか」
「当たり前だろ。俺が何でも聞くから、ひとりで悩むなよ。俺が聞いたからって解決しないんだけどさ」
「聞いてもらえるだけで心が軽くなります。本当に・・・・・・話せて良かった」
あの夜のことを思い出す。
あの夜・・・・・・花火の夜。
話したいなと思ったんだ。
大野先輩に。
でも、あんなことになって・・・・・・悔しくて悲しくていっぱい泣いた。