涙を知った後。
こいつは何いってんだ
とおもって声をだそうとしたら
うまく出なかった。
声が震えてる。
「あ、れ…?」
手で頬を触って
その震えの原因を確かめようとした。
でもその手を遮って
蓮が腕であたしの顔をぐしゃぐしゃにした。
いや、涙を拭ってくれた。
少し強引な感じで。
「気付かなかったなら…
涙なんかに気付かなくっていい。
わるかったな。」
そういって蓮は
部室から出ていこうとした。
あたしは不意にその手を掴んだ。
「…ん?」
いつものいかつさなんかなくって
優しい言い方だった。
なんで泣いてんのか
なんでひきとめたのか
全然わかんないんだけど
何故か無償に
人肌が恋しいの。
それに気付いてか
何も聞かず、あたしの隣にそっとすわった蓮。
あたしが掴んだ手を
ゆっくりといて
手を繋いでくれた。