名も無い歌
パッとSEと照明が落ち、一曲目が始まる。一曲目は落ち着いた曲、二曲目は弾けるポップ。見える範囲のファンは楽しそうな表情でノッていた。

「元気だったか?会いたかったか?」

イエーイ!と会場は盛り上がる。

「記憶に焼き付けて帰れよ!」

それは俺たちも同じ。俺もこの景色を忘れないように、一曲一曲を歌い上げた。
「ラストいけるかー?」

本編ラストはエール系の歌。夢についての曲、〈きっと気付いたんだ 予感がほら くすぶってて 今 悩んでおけば これからは大丈夫だって〉アザミの精一杯の強がり。改めて聞けば重く感じる。これからは大丈夫、それは誰に言い聞かせているの?

「ありがとう!」

そう叫んでから捌ける。汗を拭き、メイク直しをする。

「本編ラストだけで泣けるな。」

隣にいるアザミに声をかける。

「ラストは号泣か、マツリ?」

「かもな。」
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