名も無い歌
拳を振りかざして応えるオーディエンス。

MCもそこそこに、2ブロック、3ブロックとこなしていった。本編終わりで捌けた後、アザミがこめかみを押さえて顔を歪めていた。


「どうした、アザミ!?」

「んーん、何でもない。ちょっと音酔いしちゃったみたい。」

その時俺俺は彼の言葉を信じて、あまり気に止めなかった。

「無理すんなよ。」

「ありがとう。」

アンコールの時ね彼は楽しそうで、やっぱり何でもないんだと思った。

「最後の曲です、聴いてください――」

シンセとアコギで始まるこの曲は、数少ないアザミ作曲、俺が作詞した曲だ。あまり上手くないが、彼のように情景が浮かぶように書いた。バラードのこの曲は、実は俺たちの友情も込められている。

〈二人でいたら 強くなれる気がした〉なんて、まさに。

「「ありがとうございました!」」

二人で手を繋いで頭を下げれば、客席からは大きくて温かい拍手。

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