愛する君に誓うこと
そんな生活にも飽き始めた4月の終わり。
ちょうど新緑が眩しくなり始める頃。
私は一人暮らしをしていたアパートの近くの喫茶店でアルバイトを始めた。
60代後半のオーナーとアルバイトの私だけの小さな喫茶店だった。
バイトを始めるまでは、お客さんなんて入っていないと思っていたけれど、意外と常連さんが多く、客足の途切れないお店だった。
圧倒的に優雅な隠居生活の年配の人が多かったけれど、まれに私と同じ年くらいの男の人も来ていた。
喫茶店の近くには、私が通っている大学とは比べ物にならないくらい偏差値の高い理科大学があり、そこの学生らしかった。
皆、一様に難しそうな記号の並んだ本やプリントをながめながら、コーヒーを飲んで帰っていった。
「薫ちゃん、誰かナンパしちゃえば?」
とからかうオーナーに、
「住む世界が違いますから。話も合わないと思うし。」
と、いつもそっけなく答えていた。
本当にそう思っていた。
オーナーも仕事も好きだけど、大学の友達がバイト先で出会った人の話をしているのを聞くと羨ましくなって
「バイト、変えよっかなー」
なんて考えていた頃だった。
彼――
夏目 弦に出会ったのは。